いちばん大切な時刻は,ココロのなかで動いている。
quote:日本標準時を定めている通信総合研究所は,来春にも標準時の誤差を現在の半分以下の,1億分の1秒にする。ネットを利用した電子取引・決済が普及するなかで,ネット社会の基盤強化を図ることを狙っている。
正確な時刻は,NTPサーバーにもセシウム原子時計にも実はない。正確な時刻は,地球だけが知っている。地球は,秒速11kmでぎゅんぎゅん回転して,24時間で1回転する。それが1日。本当は1日は24時間ではなく,23時間56分4秒ぐらい。だから4年に1回,うるう年できちんと合わせて,問題なくわたしたちは過ごしている。だが,だ。1日はだんだんと延びている。月と引き合う力の関係で,月はどんどん地球から離れ,それに合わせて地球では,1日が1年に0.000015秒ずつ長くなっている,と云われる。となると,57億6000万年後には太陽がのぼって次の日の太陽が昇るまでに,いまの48時間,つまりいまの2日かかる,のかな? とにかく,そんな感じで「正確な時刻」というのはこの世には存在しえないのかもしれない。でも,信じられる時計はある。
彼女の腕時計が10分ぐらい遅れているのは知っていた。だから,待ち合わせの時刻が過ぎても気にならなかった。10分遅れで来たらちょうどの時間に来てくれたことになる。でも。10分が過ぎた。まだ来ない。それでも,そんなに気にはならなかった。彼女の腕時計が10分遅れているということは,約束の時間より早く来てしまうボクでも,約束の時間より10分遅く来てもいいということだ。いつも10分前に来ているから,合わせて20分得していることになる。だから,20分の遅れは全然問題ない。…結局彼女は15分遅れで来た。うれしい気分にさせる笑顔をみせながら,彼女は云った。「早いなぁ,わたしも待ち合わせの時刻より早く来たのに」。ん? 早く? 変だなと思って彼女の腕時計をちらっと見て街頭の時計と見比べると,やっぱり10分遅れている。?? そのとき彼女はボクの腕をつかんでボクの腕時計をのぞき込み,街頭の時計と見比べて云った。「あ〜,10分も早くなってるよっ。もぉ,いい加減なんだから」。
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